Dデイと衛生兵

 今日はDデイだった。1944年の今日、第二次世界大戦中、ナチスドイツへ侵攻されたフランス、ノルマンディー海岸へ上陸する作戦が決行された。アメリカを中心とする連合軍はここからパリを目指し、ヨーロッパにおけるイニシアチブの奪還を果たす。WW2の転機となる戦いであり、世界史上でも有名な作戦である。

 これを描いた映画にスティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」がある。主演はトム・ハンクス、他に有名なアクターとしてはマット・デイモンなどが挙げられる。

 冒頭20分のオマハビーチへの上陸は、リアルを追求し熾烈を極めた映像で、公開当時大変に話題になったという。何度見ても色褪せないグロテスクさである。

 このプライベートというのは「個人的な」という意味だけでなく、軍の階級である「2等兵」も表す。ただし、単に2等兵ライアンを救うぞ!という話でなく、プライベートな、単に戦いの勝利を目指すためではない、私情の挟まれた任務である。中隊彼らは煩悶を重ねながら、与えられた任務を遂行する。

 そういうことで本日は改めてプライベートライアンを視聴した。

 以下は劇中の内容に触れるものであるため、視聴予定のある方は見ないようにしてください。上記を読んで興味を持った方は是非一度みていただきたい。とても評価の高い戦争映画です。うそっこティーガー戦車もかっこいいゾ!弾持ってこいアパーム!!!!

 ライアン救出隊のメンバーは、みんな味があって良い。

 震える手を抑えながら死んだ部下を数えるミラー大尉、頼れるおっさんホーヴァス軍曹、ブルックリンの雄・ライベン(ライベンだけ一等兵というのを今知った)、退場の早さが悔やまれるカパーゾ、激ヤバ狙撃兵ジャクソン、ユダヤ系のメリッシュ、衛生兵ウェイド、そして準主人公アパム。

 視聴回数を重ねるごとにいろんなものが見え、それぞれの言葉や心の動きに目がいくようになる。お気に入りはジャクソンで、キャラ付けがはっきりしていて面白いし、何より顔が好みだ。

 今回、強く印象に残ったのはウェイドのことだった。

 ウェイドは衛生兵だ。青白く小柄で、八の字に結ばれた口が臆病そうな印象を受ける。会話の中で前へ出てくるようなこともない。

 しかし、戦場での彼はとても勇敢だ。人を治すためなら自分の危険を省みず、ともすれば無鉄砲な行動をとろうとする。銃弾の飛び交うオマハビーチでも必死で治療に当たり、カパーゾが狙撃されると飛び出して治療をしようとする。

 ライアンの認識票を探すシーンで、笑いながら乱雑にタグを扱う他のメンバーに対して「空挺部隊が見ているぞ」と怒る。空挺部隊は、輸送機から敵地にぼとぼと落とされる過酷な任務を生き延び、疲弊しきっている。勇敢で優しい男なのだと思う。

 死んだカパーゾが託した父親宛ての手紙を書き写しながら、ウェイドは自分の母との思い出を語る。いつも帰りが遅い母親が俺の顔を見ようと早く帰ってきた日も、寝たふりをしていた、バカだったんだ、と目に涙を浮かべながら笑う。あまり顔を合わせない母親と喋るのが気恥ずかしかったのかもしれない。

 ミラー大尉が失った95人目の部下はウェイドだ。レーダー基地での戦闘で被弾したウェイドは、分隊で一番惨たらしく死んでいく。「死にたくない、ママ、ママ、家へ帰りたい」と叫び、撃たれた箇所を聞いて自分が助からないと判断したウェイドは大量のモルヒネを打ってもらい、死んだ。勇猛果敢な衛生兵の最期は見ていてとても辛い

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